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インド英語の発音の特徴は?18言語の研究で確かめた

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インド英語は、英語を仕事で使う日本人がいちばん多く出会う「ネイティブではない英語」のひとつです。

それなのに、日本語で読める解説の多くは「なまりが強い」「聞き取りにくい」で終わっています。

この記事では、インド政府の公用語局が公開している憲法の条文と、インドの研究機関が18言語・80人分の音声を調べた論文を一次資料にして、インド英語の発音に何が起きているのかを具体的に説明します。

あわせて、「よく言われているのに、研究では確認されなかった特徴」も同じ論文から紹介します。

目次
筆者の高正熊生

この記事を書いた人|高正熊生(たかまさくまお)(TOEIC920・英検準1級)
英語サービス選びの専門家|英語サービス60社以上を体験/取材

インド式英語とは?言葉の2つの意味

「インド式英語」という言葉は、日本語では2つの意味で使われています。

1つめは、インドで実際に話されている英語のことです。

言語学ではIndian English(インド英語、略してIE)と呼ばれます。

2つめは、日本で売られている英会話メソッドの呼び名としての「インド式英語」です。

この記事が扱うのは1つめ、つまりインドで実際に話されている英語のほうです。

なぜインドで英語が使われているのか

インド憲法の第343条第1項は、連邦の公用語をデーヴァナーガリー文字のヒンディー語と定めています。

条文はこうです。

The official language of the Union shall be Hindi in Devnagari script.

同じ第343条の第2項は、憲法の施行から15年間、連邦のすべての公務で英語を引き続き使うと定めていました。

for a period of fifteen years from the commencement of this Constitution, the English language shall continue to be used for all the official purposes of the Union

憲法の施行は1950年なので、この15年は1965年に終わっています。

ただし第3項が、15年が過ぎたあとも議会が法律で英語の使用を定められるとしていました。

Parliament may by law provide for the use, after the said period of fifteen years, of the English language…for such purposes as may be specified

つまりインドの英語は、「唯一の公用語」ではなく、憲法と、そのあとの法律によって使用が続けられている言語です。

この3つの条文は、インド政府 公用語局(Department of Official Language) の公式ページに掲載されているものです(2026年9月23日閲覧)。

この記事が根拠にした研究

ここから先の発音の話は、インドのIIIT HyderabadとIISc Bangaloreの研究者が2022年に公開した論文をもとにしています。

この論文は、インドの18言語の音韻と、音素ラベルを付けた80人分の英語音声を突き合わせて、これまで言われてきたインド英語の発音規則のうち、どれが実際に裏づけられるのかを調べたものです。

Shelly Jain ほか「An Investigation of Indian Native Language Phonemic Influences on L2 English Pronunciations」(arXiv:2212.09284/2022年12月19日公開)。

インド英語の発音の特徴

論文は、インド全体に共通する特徴と、一部の地域だけの特徴を分けて結論を出しています。

まず共通する特徴から見ていきます。

tとdがそり舌音になる

インドの諸言語には、歯茎閉鎖音(alveolar stops)がありません。

英語の t と d は、この歯茎閉鎖音です。

母語に無い音なので、話者はいちばん近いそり舌音(retroflex=舌先を上に反らせて出す音)で代用します。

日本語話者の耳には、t と d が少し硬く、こもった音に聞こえます。

論文はこの置き換えを「インド英語に共通の特徴(universal IE characteristics)」と結論づけています。

つまり、話し手の出身地に関係なく起きる、いちばん基本的な特徴です。

thが歯の閉鎖音になる

同じ理由で、th の音(dental fricatives=歯摩擦音)もインドの諸言語にはありません。

そのため th は、舌を歯につけて出す閉鎖音(dental stops)に置き換わります。

think が「ティンク」、this が「ディス」に近く聞こえるのはこのためです。

これも論文が、地域を問わない共通の特徴として挙げています。

二重母音が単母音になる

母音でいちばん大きいのは、二重母音が単母音に置き換わることです。

インドの諸言語にも二重母音はありますが、英国の容認発音(RP)と共通するものが少ない、と論文は説明しています。

だから話者は、自分の言語にある母音で近似します。

face が「フェイス」より「フェース」寄りに、goat が「ゴウト」より「ゴート」寄りに聞こえるのは、この置き換えの結果です。

なお論文は、それまでの研究が「置き換わった先は長母音になる」と予測していたのに対し、データから導いた規則はそうならなかった、とも報告しています。

地域によって変わる特徴

次は、インド全体ではなく特定の地域に限られる特徴です。

論文はこの2つを「普遍的ではなく地域的」とはっきり分類しています。

有声と無声が入れ替わる

有声音(b・d・g・v・z)と無声音(p・t・k・f・s)が入れ替わる現象です。

論文はこれを、ドラヴィダ語族、とくにタミル語とテルグ語の話者の特徴として確かめています。

話し手の数が多いのでよく出会いますが、インド全体の特徴ではなく、南部に限られた地域的な特徴だと結論づけられています。

気音が弱い

息を強く出す気音(aspiration)が弱い、または無いのも地域的な特徴です。

ドラヴィダ語族の話者は、無声の歯摩擦音を気音なしの歯閉鎖音で置き換えます。

それ以外の多くのインド言語の話者は、気音つきの歯閉鎖音を使います。

よく言われるが研究では確認されなかった特徴

この論文でいちばん役に立つのは、「言われてはいるが、データでは確かめられなかった」として捨てられた規則の一覧です。

ここを知っておくと、間違った思い込みを持ったまま聞き取りの練習をせずに済みます。

vとwを区別しない

インド英語の説明でもっともよく見かけるのが、b・v・w の音を区別せずに使うという話です。

論文は、オリヤー語・ベンガル語・アッサム語の音韻からこの現象を予測しました。

ところが実際の音声データでは観察されず、この規則は捨てられています。

つまり「インド人は v と w を区別しない」は、少なくともこの研究では裏づけが取れていません。

jの音が入る

子音のあとに半母音の j が入る口蓋化(palatalisation)も、捨てられた規則のひとつです。

書き起こしには現れるものの、英語の単語ではごくわずかしか起きなかった、と論文は書いています。

その他に捨てられた説

テルグ語の話者が sh の音を s に置き換える、グジャラート語・マラーティー語の話者が f を p の気音つきの音に置き換える、という説も挙げられています。

しかしいずれも、予想に反して他の地域と同じ発音だった、と報告されています。

インド英語を聞き取るために今日からできること

ここからは筆者の考えです。

上の特徴を知っておくと、聞き取りの練習は「音に慣れる」より「置き換えの規則を当てはめる」ほうが速く進みます。

やることは3つだけです。

  • t と d が硬い音で来たら、歯茎閉鎖音に戻して考える
  • th が「ティ・ディ」で来たら、th に戻して考える
  • 二重母音が短く来たら、伸ばして考える

この3つを頭に置くだけで、初めて聞くインド英語でも意味が取れる場面はかなり増えます。

逆に、「v と w の区別」のような裏づけの無い思い込みは、いったん外したほうが聞き取りの邪魔になりません。

まとめ

  • インド英語に共通する子音の特徴は2つ=t・dのそり舌化と、thの歯閉鎖音化
  • 母音では、二重母音が単母音に置き換わる
  • 有声と無声の入れ替わり、気音の弱さは、南部に多い地域的な特徴
  • 「vとwを区別しない」は、18言語・80人を調べたこの研究では確認されていない
  • インドで英語が使われているのは、憲法第343条と、そのあとの法律による

この記事の事実は、すべてインド政府の公用語局の公式ページと、上に挙げた2022年の論文から取っています。

筆者の考えを書いた箇所は、その旨を本文に明記しています。

\自分の発音と聞き取りが今どの位置にあるか/

筆者が3回受けて中身を書いた記事です

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